Dicerbility Dialogue

Vol.1 収益を生む特例子会社の姿 前編

楽天ソシオビジネス株式会社 代表取締役社長 川島薫氏

数ある特例子会社1特例子会社:わが国には、事業主は一定の比率(2020年度は全従業員数の2.2%)で、障害者を雇用しなくてはならない障害者雇用義務制度がある。「特例子会社」制度とは、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、そこで雇用されている労働者数を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率に組み入れ算定できる制度。の中で、数々のユニークな取組み繰り出し黒字化を維持し続ける楽天グループの楽天ソシオビジネス。その代表である川島薫さんに、会社経営の在り方や障害者の採用・人材育成に関するお考えをお伺いしました。特例子会社として特別に扱われることなく、あくまでもグループ会社の一つとして評価されること、社員ひとりひとりのパフォーマンスを高めることを「当たり前」と考え、楽天グループ内のアウトソーシングだけでなく、自社独自事業にも取り組まれています。ご自分の性格を「負けず嫌い」と呼ぶ川島さん。その背景には、ここに至るまでの半生がありました。

プロフィール 川島 薫(かわしま かおる)

1962年東京都生まれ。0歳の時に「先天性両股関節脱臼」との診断で手術を受けた。長女出産後に右股関節が悪化し1989年身体障害者手帳を取得。80年、教育事業出版社に就職し、経理業務に従事。85年、出産を機に主婦業に専念する。99年、空調メーカーのコールセンターSVとして8年勤務した後、CADの訓練校に入学。訓練校の先生の薦めで障害者就職面接会に参加し、2008年楽天ソシオビジネスに一般職社員として入社。特例子会社立ち上げメンバーとして採用・人事・労務・営業などのリーダー、マネージャー、部長職を経て2013年に取締役、2018年6月に副社長、2019年6月より現職。
著書に『障がい者の能力を戦力にする』(中央公論社)がある。

楽天ソシオビジネス株式会社 https://corp.rakuten.co.jp/socio/

2007年12月設立。2008年楽天グループの特例子会社認定を受ける。グループ内のアウトソーシング業務を拡大する一方、多様な人材の雇用を目指し独自事業を展開。2012年より通期黒字を継続。

プロパーのトップを輩出するのが目標。
障害者が自分で社会にインパクトを与えられる社会に。

特例子会社は、親会社の障害者雇用数を確保する意味合いが大きいと考えておられる方も多いです。川島さんはそうではなかったんですよね。

私は「特例子会社」ということをあまり意識せずに楽天ソシオに入社しました。それが良かったのでしょう。私自身も障害者ですが、「障害者は配慮されるのが当たり前」という感覚がありませんでした。会社で働くからにはパフォーマンスを評価されるのが当たり前。売上を上げるのが当たり前だと考えていました。

しかし、当時の会社の目標管理シートには「勤務管理をきちんとする」といった行動・姿勢に関する指標くらいしかなく、こちらからすると自分のパフォーマンスを評価してもらえないのが、とても不満でした。そこで、私は評価制度を徹底的に見直し、パフォーマンスをきちんと分けて評価できるようにしました。

また、給与体系の見直しも行いました。一般的に障害者の中途採用は、今までの職歴から給与を決める会社が多いのと思いますが、実際に仕事をやってもらった上で決めるようにしました。

教育に関しては、「やりがい」を重視しました。私自身は、仕事をしている時が一番楽しいと思ってます。社員にも私と同じように、やらされている感覚ではなく、「仕事って楽しい」「仕事をしたい」と思ってもらえることを目標にし、社内教育に力を入れました。